十五夜に舞姫は舞ふ

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 優馬は何がなんだか分からない状態だった。確かに自分は昔、月見祭の舞姫と呼ばれていた。これは修平と共演したときに自分が女役を演じた時に云われた言葉だ。  それよりも彼女は自分と共演すると言ってはいなかっただろうか。優馬の頭の中でクエスチョンマークが沢山浮かんでいると、目の前の彼女が睨んできた。彼女は袖で涙をぬぐうと口を開く。 「ねぇ、私の話聞いている? 私ね、今日の共演、凄く楽しみだったの。だって、二年前のあの歓声を浴びた舞姫と一緒に踊れる……、そう思ったの。なのに、稽古場に行ったら舞姫はいないし、その舞姫が稽古から逃げているって聞いたら居ても立っても居られなかった。町中を探してここに来たの。それがあんな弱音を吐いて、馬鹿みたいに泣いているのを見たらなんか殴りたくなった。本当だったらあんたの頬を叩きたかったのよ。でも、あんたの顔は商売道具だから叩かなかった。あんたは皆からどれ程期待されているか知ってる?」
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