十五夜に舞姫は舞ふ

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 優馬たちが話をしていた時、祭りの会場である中央広場ではいろんな人が走り回っていた。それは先に戻った修平もそうだった。 「鶴岡のおじさん! この荷物はどこにおくんだ?」 「おう、それは舞台の斜め下に頼む」  大きな機材を修平は運び終わると、修平はふと空を見上げた。空は茜色で、星が見え始めている。その上にはうっすらと満月も見えた。どうやら今日が十五夜らしい。慌てて左手に着けた腕時計を確認すると、もうすぐ優馬の母と約束した時間が迫っていた。 「やべぇ、鶴岡のおじさん! もう俺、舞台準備に入るわ。このままだと由紀子さんとの約束の時間に間に合わねぇ」  由紀子(ゆきこ)とは優馬の母の鷲崎由紀子(わしざき ゆきこ)の事だ。どうやら、彼は急いでいるようで鶴岡の話を聞く前に走り出していた。 待ち合わせ場所まではここから一分もかからないのだが、待ち合わせの時間を五分もオーバーしていたのだ。彼が走るのも無理はないだろう。
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