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――優馬、お前は今年も自分の母さんを泣かせる気なのか。なぁ、今の由紀子さんを見ても逃げるのか。
修平はこの場にいない優馬に何度も呼びかける。
そんな時、会館の中からスタッフの一人が焦って出てきた。由紀子を見ると話し掛ける。
「先生、大変です! 今日の相手役の香坂朱里(こうさか あかり)さんが二時間前に出ていったきり帰ってきてないんです!」
「なんですって!?」
由紀子は驚くと、すぐに連絡が取れるかスタッフに聞いた。しかし、スタッフは首を振る。どうやら、朱里は何も持たずに外に出たらしい。
「もう開演まで一時間をきったというのに。どうして香坂さんが出ていったの?」
「はい、今回の相手役の優馬君の話をスタッフの一人がうっかり話してしまって……。それで、香坂さんが根性を叩き直してやるって言いながら出ていったそうです」
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