十五夜に舞姫は舞ふ

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「まさか……。僕に走らせるつもりじゃないよね?」 「そのまさかよ。もとはといえば、あんたのせいでこうなったんだから責任取って私を会館まで運びなさい」  この後、朱里の無茶ぶりで優馬は朱里を連れて走り続け、わずか三分で会館に到着した。この時の優馬の顔は魂が出てきそうなくらい青白い顔だったらしい。 「本当に申し訳ございません!! あ、あの! 今、プログラムは!?」  朱里は土下座のように頭を下げると、由紀子に現在の進行状態を問う。由紀子はクスクスと笑うと朱里に顔を上げるように言った。 「まだ余裕があるから大丈夫よ。あなたたちはプログラムの最後になったの。だから着付けは間に合うわ。それよりも……。優馬、やっと戻ってきてくれたのね?」  由紀子は優馬の方に顔を向けると、優馬を抱きしめた。 「母さん、苦しい」 「あら、ごめんなさい。母さん、優馬が戻ってきてくれたことが嬉しくて……」  由紀子は優馬から離れると、にっこりと微笑む。優馬は顔を赤くして、ただいまと言った。
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