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優馬は着物をハンガーから下ろすと、慣れた手つきで着付ける。着付けが終わったあとに由紀子から化粧をされた。いつもの優しそうな自分の顔がだんだん違う人物に変わっていく。そう、あの二年前と全く同じなのに今はまた別の気持ちだった。
「はい、終わったわ。久しぶりの舞台、思いっきり楽しんで」
由紀子はトンッと優馬の肩を叩くと、舞台に行くように背中を押す。急に押されたからか前のめりになり、倒れそうなところで優馬の手を誰かが掴んだ。
「怪我をしたら何もかもが台無しでしょ? しっかりして」
そう言うと朱里は優馬の手を引く。朱里もまた、着物を着て化粧をしているからかさっきまでとは別人だった。二年前の自分とはまた違う舞姫。神々しく、美しい月の姫。朱里にとても似合っている。
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