十五夜に舞姫は舞ふ

5/27
前へ
/27ページ
次へ
「だから、待てって言っているだろうが!」  修平は優馬の腕をグイッと引っ張ると、そのまま地面に倒れた。それと同時に優馬の足も止まる。幸い、修平の着物は破けておらず彼自身にも怪我はなかった。 「やっと……、やっとやる気になってくれたか?」 「僕の気持ちは変わらないよ。それよりその着物、うちでも相当高いものだから丁重に扱ってね? で、話はまた稽古の事? 何度も言うけど、僕はやらないよ。今の僕の実力じゃ、母さまの期待に応えることができないんだ」  そう云うと優馬は目を伏せた。そしてゆっくりと修平の手を自分の腕から離す。修平は立ち上がると優馬に待てと叫んだ。先程、派手に転んだためか足がフラフラしている。 「俺の話はまだ終わっていない! なんで、お前は踊らないんだ。俺よりもあんなに舞が好きだったじゃないか。それが中学に入ってお前は急に稽古もサボるようになった。何があったんだ? それはお前の幼馴染の俺には言えないことか? 答えろよ!」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加