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暫く走っていると、優馬の息が続かなくなってきた。無理もないだろう。彼は体育の成績は特に悪い。その中でも持久走などの陸上競技は一番苦手であった。なら、何故走るんだと思うだろう。答えは何となくだ。彼がただ、稽古から逃げるために走っただけにすぎない。こんなことがなかったら走ることはなかっただろう。
修平から逃げた優馬は町を一望できる丘の上にいた。ずっと、走り続けていたからか息が切れている。彼はその場にあった赤茶色になった鉄の手すりを掴むと大きく深呼吸をした。息を深く吐露したからか肩の荷が下りたような気もする。
「修平、怒っているかな。本当はあんなことをいうつもりはなかったのに……、本当に僕は馬鹿だ」
優馬はぼーっとしながら丘の下の月見町を見た。中央広場には沢山の出店や人。昔、自分が踊っていた舞台のセットが見える。それを見て、優馬は切なくなった。
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