十五夜に舞姫は舞ふ

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 優馬は顔を上げるとそこには一人の少女がいた。先程の鈴の音を転がしたような声は彼女だろうか。彼女は不服そうに丘を登りきると優馬に近付く。綺麗な腰辺りまで伸びた黒髪、透き通った海のような碧い目、桜色の唇。優馬は彼女の美しさに息をのんだ。  何故、彼女は自分が思い悩んでいることを知っているのか。そもそもこの場所にはさっきまで自分しかいなかったなんてことは全て忘れてしまった。優馬はただ茫然と彼女を見つめる。  優馬と同い年であろう美少女は彼の目の前にくると、優馬の額に向かって右手でチョップをした。しかも手を抜いていないため、その痛みは時間差でじわじわと伝わる。 「いっ、いたぁ!!」  その痛さに優馬は額を両手でおさえる。涙は痛さでなくなった。
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