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姉弟揃ってきれいな顔立ち。
もっとも男じゃ、きれいったって意味ないけどな。
でも、真のおかげで少しだけ寂しさがまぎれた。
真のやつ、ちびのくせに絵がとても上手で、消し炭の切れっ端と捨てられていた紙を拾ってきては、いろんなものを描いていた。
神社の桜を描いたものなんか色をつけさせたらどんなにきれいだろう。
いちばん驚いたのは、記憶だけを頼りに描いた姉の顔。
黄ばんだ紙の中に優しく微笑む吉野がそこにいた。
「これ、もらっていいか?」
そう言うと、真は嬉しそうににっこり笑った。
それからこの紙切れは俺の宝物になった。
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