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七月三日。 曲がり角ガール事件から二日が経過した。 蒙古斑は日の目をみることなく、スラックスの下にひっそりと存在している。 フードはいい。 じりじりと照り付ける夏の直射日光も防いでくれる。 例の曲がり角を何事もなく通り過ぎる。 ホースで水をまく音がして、雨降りの湿っぽいにおいがする。 何の変哲もない校舎の時計が見える。 三階建ての校舎は風雨にさらされくすんだ白色をしているが、建設からそう古い学校ではない。 有名進学校だとかスポーツ特待だとかそういった特色もない、僕と似たような高等学校である。 校門は既に締められていた。 当然だと思う。 時間からして二限目が始まっているからだ。 僕は慌てず騒がず裏門に回った。 すっかり錆びて赤銅色をした背の低い門を乗り越えて、グラウンドに降り立つ。
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