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ホイッスルの音がする。 グラウンドには白線が引かれ、その三本の縦線の間を体操着の二人が駆け抜ける。 足の速い人は見ていて気持ちがいい。 クラウチングスタート。 素晴らしい瞬発力で低い姿勢のまま飛び出して数歩。 伸びていく背筋にトップスピード。 地面を蹴る足は砂埃を舞い上げ、膝がぐんと前へ出る。 前へ、前へ。 脳から指令が出てるわけじゃなく、まるで体自体がそう言っているみたいに、前へ前へ前へ。 そんな場面を横切って、僕は校舎に近付いた。 ほぼ全ての窓が開け放されていて、そこから何色とも言い難いカーテンの端がふわりとたなびく。 窓際の生徒たちの頭が見える。 三階の左端の窓から見慣れた頭が覗いた。 陽があたった髪は普段よりも茶色く、首にかかるほどの長さの髪がふわふわと気持ち良さ気に揺れている。
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