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そんな普通な僕にも、唯一と言える特技がある。
今現在、それをお披露目中だ。
フードを被り前も後ろも右も左もわからない状態で、誰ともぶつからずに歩くことができる。
この一年と三ヶ月余り、事実僕は誰ともぶつかっていない。
街をのしのし歩く不良と肩が当たることもないし、はたまた曲がり角でパンをくわえた女の子と衝突することもない。
あと十メートルも歩けば、その嬉し恥ずかしの曲がり角だが、今日も至って平和にそこを曲がるだろう。
期待などは微塵もない。
そもそも衝突などしたら事故だ。
きっと怪我をする。
たんこぶができるかもしれないし、足を捻るかもしれない。
もしくは、女の子がひたすら罵声を浴びせ去る。
そんなことがあったら、僕は一生のトラウマを背負うことになる。
そんなリスクを犯してまで、運命的な出会いをしたくはない。
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