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前を走る現実にやっと思考が追い付いて、僕は臀部の痛みを再度認識した。
たんこぶはできていないし、足も捻ってはいない。
なにより心の傷を負わずにすんだのは喜ばしい。
しかし、この臀部の痛みはどうだ。
きっと青痣になっている筈だ。
自分より十数センチは低かろう身長の女の子とぶつかり自分が吹き飛び、助け起こされ、揚げ句気の利いた一言も言えず仕舞い。
もはや、男のメンツもあったもんじゃなかった。
運命的な衝突は、それを何一つ感じさせることなく過ぎ去った。
跡に残ったのは、蒙古斑だけにちがいない。
(何、ニヤニヤしてるんだ変態)
と、もう一人の僕が言った。
「何かにつけて変態と言うのは良くない」
僕は言った。
「それにしても……」
フードを被り直す。
「パンはくわえてなかったね」
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