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はらり、はらりと、艶やかな黒髪が畳に落ちた。
総司は慌てて突き出した手を引っ込めようともせず、呆然と香を見ていた。
香は総司の脇差しで大胆にも、自分の髪を切り落としたのだ。
「……髪は女の命」
今まで黙って話しを聞いていた斎藤がポツリと呟いた。
それに総司がハッとした。
「私は…命も惜しみません」
吸い込まれてしまいそうな香の瞳を見て、総司はゾクリとした。
香の眼は、武士よりも武士らしい眼をしていたのだ。
それほどまでにも、香の意志は固いのか。
総司は固唾をのんだ。
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