冬の向日葵、夏の椿

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  「…………また、副長が……」 小さく口を開いた蒼妃の、怒りが滲み出た重低音は、木枯らしのように藤堂に鳥肌を立たせた。 藤堂はぶるっと身震いして、じわじわと感じる怒りの矛先が自分に向かないように、恐る恐る先を促す。 「…………副長が?」 「この前修繕したばっかりの着物を三着とも駄目にした挙げ句、私に頼めばいいものをわざわざ金子片手に呉服屋に出掛けていったんです」 これが怒らずにいられるか、と。 おそらくその時の土方の態度を思い出したのだろう。蒼妃の眉間に、土方と負けず劣らずの皺がよる。 本当に似た者同士だ、と藤堂はふっ、と笑みを浮かべた。 「…………で、蒼妃はどうしたいの?」 あぐらをかいた膝を支点に頬杖をついてそう聞いた藤堂に、蒼妃は怪訝な顔をした。 「どう……したい、って?」 「このまま、燻ってるつもり?」 きょとん。 そんな表現がまさにピッタリなぐらい、無垢な顔で小首を傾げた蒼妃。 「…………」 「…………」 「…………泣き寝入り、する?」 柔らかい笑顔でそう言う藤堂は、結局の所この退屈を紛らわせればそれでいいのだ。 自分に害が及ばない限りは。 だからこうして、蒼妃をけしかけているわけだが。 「………………まさか」 ニィ、と、口元を歪めた蒼妃は、それはそれは凶悪そうな笑みを浮かべていた。  
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