261人が本棚に入れています
本棚に追加
◇ ◇ ◇
事が起こったのは数日後、からっと晴れたある朝だった。
「蒼妃ぃぃぃぃッ!!!!」
爽やかな朝の空気にヒビを入れたのは、天をも揺るがす土方の怒声だった。
「…………はい?」
まるで、図っていたかのように、土方の部屋に蒼妃はすぐに現れた。
彼女は箪笥の前にいる、鬼も裸足で逃げ出すような形相の土方に向かって、にこりと微笑みさえした。
「――――俺の着物はどこへやった?」
「ほつれていた物は修繕に、擦り切れていた物はゴミに、汚れていた物は洗濯に」
地を這うどころかえぐり取るような声にも怯まず、むしろ楽しそうに返す蒼妃。
その口元は堪えきれない笑いのせいでひくひくと引きつっていた。
最初のコメントを投稿しよう!