冬の向日葵、夏の椿

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        ◇  ◇  ◇ 「ごめんください」 暖簾をくぐって蒼妃が入ったのは京でも有数の老舗。一揃え頼むだけで島原に三度は行けるほどの高級な呉服屋だ。 「ちょっ、おいっ――――」 「しっ!! 小梅さんは黙ってて」 平然と中に入った彼女を慌てて追いかけた土方の口を塞いだ蒼妃は、店の奥から現れた青年に笑みを向けた。 「こんにちは、京太さん」 「やっと来てくれたんだね、お夏さん」 京太さん? お夏さん?? 目の前で繰り広げられる会話についていけず土方は蒼妃の一歩後ろできょとんとしていた。 「…………で、こちらが小梅さんです。小梅さん、こちらはここの若旦那で越前 京太さん」 「初めまして、小梅さん」 突然話を振られた土方だが、まさか声を出すわけにもいかず会釈だけを返した。 「京太さん、彼女は恥ずかしがり屋さんだから口説いても無駄ですよ?」 「ひどいな~。そりゃ小梅さんも綺麗だけど僕はずっとお夏さん一筋なのに~」 「亭主の着物を注文しにきた相手に横恋慕はいただけませんね~」 「亭主っ!? お夏さん結婚したんですか?」 驚いて頓狂な声をあげる越前。 土方もわけがわからず蒼妃を見つめる。  
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