冬の向日葵、夏の椿

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  「いいえ。今日用があるのは私じゃなくて小梅さんの方」 「あ、小梅さんが新妻さんなんだ?」 くるん、と犬のような目が土方の方を見たが声を出せばすぐに男だとバレてしまう。 隣で澄ました顔で笑っている蒼妃に心の中で悪態をつきながら、土方はにこりと会釈でごまかした。 「ええ。私は彼女の付き添いです」 「私に会いたかったんですか?」 口調を変え、すっかり呉服屋の若旦那の顔になった越前は、冗談めかして言った。 「さあ、どうでしょうね? というわけで、彼女の兄上様の着物を三着ほどお願いしたいのですが?」  
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