冬の向日葵、夏の椿

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        ◇  ◇  ◇ その夜、土方は真新しい着物を身に纏って自室で蒼妃と対峙していた。 「間に合って良かったですね、平助様?」 不機嫌さを隠そうともせずにひたすら煙管を吹かす土方に向かって、口を開いた蒼妃の第一声がこれ。 鬼の一睨みをものともせず愛しい人に向けるような、とろけるような笑みを浮かべている蒼妃。 「…………何で女装なんてしなきゃならなかったのか……納得のいく理由を、教えてくれるんだよなぁ? あ?」 並の人間なら竦み上がってしまう低音の、怒りのこもった言葉にも、彼女はその笑みを崩さない。 「美女を連れて行くと安くしてくれるんですよ、あの人」 「あの若旦那か。どうやって知り合ったんだ?」 「先日、街中で突然求婚されまして」 「は? きゅ、求婚!!?」 思わず、素っ頓狂な声を上げた土方に蒼妃はくすっ、と笑う。 「もちろんお断りしましたが、なかなか情熱的で思わず頬を染めたのは否定できませんね」 その時の事を思い出したのか、言いながら蒼妃の頬はほんのり朱くなる。 そんな彼女の様子に、土方が冷静でいられるわけがない。 心の中は台風も真っ青な大荒れ状態だ。 んだよ、求婚って!! 聞いてねェぞ、そんな話。 今日のあの男の態度……明らかに諦めてないだろ! しかも何で思い出して照れてんだよ!! 「…………蒼妃っ!!」 「うわっ、んぅ――――――!!?」 「――――俺の前で、俺以外の男を思って頬染めてんじゃねェよ」 首まで真っ赤になった蒼妃を見ながら、土方は満足そうにそう言ってから彼女を強く抱きしめた。 雁字搦めに、捕らえておきたい。 誰の目にも触れないように――――。 そう、思いながら。  
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