笑えない理由

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  草木も眠る丑三つ時。 眠らないのは月と妖と、悪人だけ。 微睡む標的の枕元に降り立った俺は、懐から短刀を取り出す。 窓から差し込む月光に冷たく光る刀身に醒めた目をした俺が映った。 「…………いい夢みぃや、最期ぐらい」 口を抑えた手の下からくぐもった断末魔の叫びが振動となって伝わる。 が、それもすぐになくなり、暴れていた手足は力なく布団に落ちる。 「――――お休み、ゆっくりと」 当然ながら、返事はない。  
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