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「綺麗なものを見てると、時が経つのなんて忘れちゃいませんか?」
にっこり笑って振り向いた蒼妃の言葉に俺は頷けなかった。
綺麗なものなんて――その儚さを知ってるからこそ、俺は見たくない。
自分の穢れを際立たせるような物を、どうして愛でられよう?
そう思っても、俺は自分の真っ赤な穢れた場所を彼女に見せたくないから
「…………せやね。ずっと、見てられたらいいのになぁ」
心にもない同意を示した。
「――――そういえば仕事帰りですよね、山崎さん。お風呂沸かしてきます」
そう言って立ち上がる蒼妃に礼を言いながら内心、俺は怯えた。
奇妙な話の逸れ方に、気付かれたのではないか――と。
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