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せっかく蒼妃が用意してくれた風呂だったのに、身も心も温かく――――とはいかなかった。
それでも半刻も湯殿から出なかった俺の為にと彼女が入れてくれた冷たい麦茶には癒された。
「悪いなぁ~。こんな遅うに動かして」
台所で麦茶を啜りながら軽い口調でそう言った。それがいつもの俺だから。
「かましまへんえ。うち、こんな事でしか山崎はんのお役に立てまへんし」
にこにこと笑顔で冗談を返してくれる蒼妃に俺は、いつもと寸分違わぬ笑みを返す。
いつからか……そうしている自覚すら失ってしまった、愛想笑いによく似た笑顔の仮面を貼り付けて。
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