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◇ ◇ ◇
「副長は、蒼妃といるときめっちゃ幸せそうに笑いますね。こっちが妬けてまうくらいに」
「あ? 突然何言ってんだ、山崎。
暇そうだが……仕事は済んだのか?」
今日も今日とて机にかじり付いている副長の頭上から顔を覗かせて言えば、そんな返事が返ってきた。
俺と同じように――いや、ひょっとしたら俺よりずっと血に塗れている副長。
だけど、副長は俺とは違う。
対峙する敵はみんな刀を抜いて、明確な敵意と殺意を持って、死を覚悟して――。
「……悩みでもあんのか?」
ほの暗い俺の思考を断ち切ったのは、そんな副長の言葉だった。
「へ…………? 珍し~、副長が他人を気遣っとる。こりゃ明日は槍が降るな」
「茶化すな。お前が用もなく此処にいるなんて、そっちの方がよっぽど珍しい」
誤魔化そうとしたのに、怒るでも呆れるでもなく冷静に返された。
それを言われるとぐうの音も出んのに。
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