笑えない理由

10/13
前へ
/43ページ
次へ
  「いや~、笑えるってすごいなぁ、と思いまして……」 仕方ないから本当の理由をちょっと――いや、だいぶぼかして言えば案の定、副長の眉間の皺はさらに深くなった。 「何言ってんだ? 意味が分からん」 「とにかく、副長はそのまんまでいてくれはったらいいんですよ。ほな」 「は? ちょ、おい、山崎っ!?」 逃げるように……というか、逃げてきた。 何のために副長の部屋に行って、一体何を求めてあんな事を言ったのか。 自分でも全く分からない。 ただ、改めて自分の異質さを認識しただけだった。 俺は、いつから感情を失ったんだろうか。 昔はよく笑っていた。 昔はよく怒っていた。 昔は時々、泣いていた。 「俺はいつから…………」 答えなんか誰も、くれない。  
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

261人が本棚に入れています
本棚に追加