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ごろんっ、と重たい体を動かして部屋の入り口に背を向けた次の瞬間、障子が勢いよく開けられた。
緩慢な動作で起き上がりながら俺は気配を探る。
…………蒼妃か。
入り口に立つのが誰か分かった瞬間、口元が笑みを形作ったのを自覚する。
「どーしたん、蒼妃?」
振り向いた俺は、いつもと寸分違わぬ笑みを浮かべていたはずだ。
「原田さんがわらび餅を買ってきてくれて皆で食べようって事になったので、呼びに来ましたっ!!」
楽しそうに無邪気な笑みを浮かべてそういう蒼妃に俺も笑みを深くして立ち上がる。
「ほな、総司の腹ん中に消える前に行かなあかんな」
「大丈夫です。縛ってきましたから」
「……縛って…………?」
「あ、もちろん私は頼んだだけで、死にかけながら沖田さんを縛り上げたのは原田さんと永倉さんですよ」
「…………さよか。ならええわ」
あの二人なら刀くらいで死にそうにないからな、なんて考えながら蒼妃の後について歩く。
誰かが俺に笑みを向けてくれる限り、俺は笑い続けよう。
誰もが死を覚悟する戦場で、俺は笑い続けよう。
誰かが俺を必要とする限り、俺は偽り続けよう。
いつかそれが笑顔(ほんもの)になると。
心の底からそう信じて――――。
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