2 勝負事

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バス停からバスに乗って、3つ目の駅で降りた。 ココは、地元でも有名な治安の悪い場所。フリー区と愛称がつくくらいに、何もかもが無法地帯。 立ち並ぶ木造住宅に、入り組んだ路地。 一方通行しか通れないような狭い道路が乱雑に交差している。 どうしてこんな場所に来たのかわからないけれど、凄く怖い。 足が竦んで動けないよ………。 だって、お父さんから聞いたことがあるもん。 この町に昔、大きなやくざの組があって大変だったと。 今も、その残党とかいたらどうしよう? いくら遙が喧嘩強くても、やっぱり怖いよ。 それに、やくざだけじゃなくて、私たちと同年代の子たちもすごくガラが悪いって聞いてる。 不安になって遙を見上げた。 遙は鋭い目をふんわりと優しく細めて曖昧な笑顔を作る。 「大丈夫、怖くないから」 つながれた指先を力強く握りしめて、遙は私を落ち着かせようとしてくれた。 不思議とそれだけで、不安が軽くなってしまう。 遙には、何か考えがあってココに連れてきたんだろう。じゃないと、悪戯に私を不安にさせたりするようなヤツじゃないもん。 気を取り直して、遙の指に答えるように私も強く握り返して、一歩踏み出した。 「あれ?遙くんっ?」 前から、いかにもヤンキーな刺繍入りのGパンに派手なシャツを着た男の子が話しかけてきた。 「おお、俊介。暇してるの?」 この前遙の部屋にいたオッドアイの男の子だ。 「今から太郎くんの家へ行く所」 …………。 もしかして、太郎くんの家ってこの辺りにあるの? 「そっか、じゃあ後で行くって伝えといて」 俊介くんと別れて、遙はドンドンと建物の密集した場所を歩く。 まるで地元を歩くように、ためらうことなく道を曲がったりしながら。 「よくこの辺来るの?」 さっきから思ってたけど、遙はかなりこの辺の道にくわしいみたい。 こんなに入り組んだ路地なのに、迷うことなく歩いている。 「まぁな」 いつ頃建てられたのか、判別不可能な程古そうな市営住宅の前で、遙は立ち止まった。 「アソコが、オレが生まれた場所だ。 今でもオヤジ側のジジイとババァが住んでる」 えっっ?
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