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突然の遙の告白に、戸惑いを感じてしまう。
だって、遙は小さいころから隣に住んでいたから、当たり前のように何も思わなかったけど、こんな場所で生まれたの??
「太郎や、大胡もココほど治安悪くないけど、今でもこの近所に住んでるよ。
志緒理には理解できないような場所かもしれないけど、だけど俺たちはこの町が好きなんだ。こんなゴミ溜みたいに臭い町だけど、ココでしか生きられない奴らもいるんだ」
この町のバス停に降りた時、私は凄く怖かった。
まるで異国に来たかのように、全然知らない場所で、しかもガラが悪いって噂を聞いていたから。
だけど、遙はこの場所で生まれたんだ。
人から聞いただけで、先入観を持ってしまっていた。
何だかすごく恥ずかしい。
「ごめんね、遙」
遙が大切にしてる場所なのに、私は自分で確かめる事もなく、恐れていた。
それが、凄く失礼なように思えてしまう。
「なんで志緒理が謝るの?
ビビるの当たり前なんだ、ホントにこの町は危ない。オレだって時々無性にこんな場所に生まれるんじゃなかったって、くやしく思う時だってあるくらいだぜ」
目を伏せて、憂いを含んだ顔をしながら遙は俯いている。
だから、私にはちゃんとした遙の表情がわからない。
だけど、声のトーンがすごく悲しみの音に聞こえる。
「…………」
どんな言葉をかければいいのかわからないから、私は遙とたった一つつながれている手に力を込めた。
「…オレと志緒理ってさ、全然考え方とか、価値観とか世界が違うと思うんだ。
オレは志緒理のそんな部分に凄くひかれてるけど、志緒理にとって…。
志緒理は、そんな違うオレを軽蔑するかもしれない」
そんな事………。
「なんで?あり得ないよっ!
私だって遙と同じようにひかれてるもん!
遙が大好きなんだよ?なんでそんな悲しい事言うの?」
「今はそうかもしれないけど、先はわかんねぇだろ。オレは志緒理を傷つけるだけかもしれない。
この前だってそうだ、ホントは大切にしたいのに、宝物のように優しくしてあげたいのに…なんか、メチャクチャにしてしまう。
志緒理が嫌がってても、無理矢理に抱いてしまった」
ああ、わかった。
遙はこの前の夜のことを言ってるんだ。
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