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今まで流れていた曲が終わり、新しい曲が流れ始めた。
同じ洋楽だったけれど、僕はその曲に聞き覚えがあった。
おそらく、ずいぶん昔に見た映画の主題歌になっていたはずなのだけれど、僕はその曲の名前も映画のタイトルも思い出せない。
レイはこの曲も知っているらしく、小さな声で歌を口ずさみながら、相変わらず体を揺らしていた。
「この曲を知っているの?」
僕は試しに尋ねてみた。
すると、レイは体を揺らすのを止めて、小さく頷いてから、「知っているわよ」と答えた。
「この曲の名前は何だったかな? ずいぶん前に見た映画の主題歌だったと思うんだけど、思い出せないんだ」
「この曲はGUNS N' ROSESのSYMPATHY FOR THE DEVILでしょう。何の映画の主題歌だったかは知らないけれど」
「ああ、それだ。思い出した。INTERVIEW WITH THE VAMPIREの主題歌だったんだ」
「知らない映画だわ。どんなストーリーなの?」
「詳しいことまでは覚えていないけれど、野心的なライターがヴァンパイアにインタビューをして、ヴァンパイアがその半生を語っていくんだよ。自分がどうしてヴァンパイアになったのかだとか、ヴァンパイアになってどのように生きたのだとか、誰がどうして自分をヴァンパイアにしたのだとか、そういうことをね」
「ふうん」
レイはそう言って小さく頷いた。
僕は胸のポケットからタバコを取り出して口にくわえ、ライターで火を点けようとしたけれど、オープンカーであるせいで、風を受けてライターの火はなかなか点かない。
そんな様子を見て、レイは僕の手からライターをとり、口からタバコを取ると、そのタバコを自分の口にくわえて火を点け、僕の口に戻してくれた。
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