キス

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ようやく海の近くまでやってくると、レイは再び音楽に合わせて体を揺らし始めた。 流れている曲は相変わらずSYMPATHY FOR THE DEVILだ。 海の近くまでは街のネオンも届かず、人気もなければ、すれ違う車もほとんどおらず、僕たちが先ほどまでいた街とはまるで別世界のように思えた。 僕が再びタバコを吸おうと、胸ポケットからタバコを取り出すと、レイは僕が口にくわえる前にタバコを奪い取り、それから僕の胸のポケットをまさぐってライターを取り出し、先ほどと同じように自分の口にくわえて火を点けてから、僕の口にくわえさせた。 「ありがとう」 僕はタバコをくわえたまま礼を言った。 「いいのよ。気にしないで」 レイはそう言ってから、あの眩しいくらいに輝く微笑みを僕に向けた。 それから、体を揺らすのを止め、ゆっくりと僕にもたれ掛かる。 多少運転の邪魔にはなるものの、レイにもたれ掛かられて悪い気はしない。 しかし、それと同時に、ようやく落ち着いていた僕の男の本能が再びメラメラと燃え上がってくる。 そんな僕に、レイは少し甘えた声で話しかける。 「ねえ、この曲、何ていう映画の主題歌だったっけ?」 「INTERVIEW WITH THE VAMPIREだよ」 「ヴァンパイアか。そんなもの、本当にいるのかな?」 「ただの作り話さ。それにたとえいるとしても、少なくとも僕たちの住んでいる街にはいないさ。夜だってネオンの明かりで昼間と変わらないくらい明るい。ヴァンパイアが活動できるのは暗い夜だけだからね。あんな街だととても生きてはいけないさ」 「それもそうね」 レイはそう言うと、少しおかしそうに笑った。
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