それぞれの10月15日②

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夜。 その男はコンビニで缶コーヒーを1本買って店を出た。 男は外に出るのと同時に、その缶コーヒーを指で軽く開けて一口飲んでみる 「……不味いな」 男は苦い顔をすると、まだ半分以上も残っている缶コーヒーを近くにあったゴミ箱に放り込む。 その様子を店の中から見ていた女の店員が唖然とした顔をしている。男はそれに気づいたが、無視して夜の街を歩いていく。 男はある女と待ち合わせをしていた。 ひたすら目的地に向かって男の足は動く。 黒いロングコートに黒いズボン。そして短い黒髪。 全身黒ずくめという浮いた容姿をしている男は、すれ違がっていく人間達の心に異様な恐怖感を植え付けていく。 スタスタと歩いていく男。 そのとき前から来た家族連れの父親と肩がぶつかってしまった。 「あ……すまない許してくれ」 男はぶつかってしまった父親に軽く謝罪すると再び歩き出そうとする。 しかし…… 「おうコラ!!待てや兄ちゃん!!人に肩ぶつけといてそんだけかい!!」 父親は乱暴に男の胸ぐらを掴んで喚き始めた。 一緒にいた妻や娘も驚いている様子だった。 男はもう一度冷静に謝罪する。 「いや本当にすまない。俺の不注意だった。どうか許してくれ」しかし父親は気が済まないらしい。 ドスの効いた声で男を脅すように喚き始める。 「ごめんで済んだら警察はいらないんだよ兄ちゃん?本当に反省してるなら金だ金。あるだけ置いてさっさと失せんかい!!」 妻はニヤニヤしながら夫が男を脅している様子を見ている。 この夫婦は子供が近くにいなければ夫婦だということが分からないほど若かった。 髪の毛は夫婦揃って金髪。まるで不良だ。 男はそんな夫婦の娘に心底同情した。 バカな親を持って大変だなと。 「オラ!!金出せや金!!」 父親はしつこく男に絡み続ける。
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