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夜の街を男はひたすら目的地に向かって歩く。
次第に辺りの人気が少なくなり、路地裏に男が入り込んだ時には完全に人の気配は消えていた。
ゴミが散乱し、野良犬の吠える暗い道を男は歩き続ける。
「よぉ待ったか?」
男は突然立ち止まり、暗い路地裏の奥に声を投げる。
その瞬間、路地裏の黒く塗りつぶしたかのような空間から、ヌゥと1人の少女が出現する。
茶髪のツインテールの髪をゆらゆらと揺らしながら少女は男に歩み寄る。
「ボス……いい加減にしてくださいよ……」
少女の口からはため息が漏れる。
そのリアクションの理由が分からなかった男は少女に理由を聞く。
「ん?俺がなにかしたか優秀な部下君。待ち合わせの時間もキチンと守っているぜ?」
「……ここにくる前に一般人を撃ったでしょ……?」
「なんで知ってんだよ……」
男はしまったと思い、頭をガシガシとかく。
この少女は男にとって優秀な部下だ。
男の仕事に関して完璧で迅速な対応をしてくれる右腕的存在。
それゆえ完璧主義な彼女に余計なトラブルが舞い込むと、途端に機嫌が悪くなることを男は知っている。
つまり今この少女は先程の男による発砲に関してかなりイライラしているのだ。
「とりあえず理由を聞きます。なんで撃ったんですか?」
「質問に質問で返すのは悪い事だが聞かせてもらおう。なんでお前がその事を知っているんだ?」
「私の部下にアナタを尾行しろと命令しました。アナタが発砲したことを携帯電話で報告された時はビックリしましたよ」
「……なんで尾行なんてさせたんだよ……」
少女は呆れながら答える。
「なんでって……そりゃアナタが我々の大切な組織のボスだからですよ。アナタのような大物が普通に街を歩くなんて危険ですからね。だからアナタの身にトラブルが起こった時、迅速に対応できるように尾行を付けさせてたんです」
「つまり……心配してくれたってことか?」
「そういうことになりますね」
「まったく……優しい部下を持って幸せだよ俺は」
「なんか真顔で言われるとムカつきますね。ではボス、こちらは質問に答えたので次はあなたの番です。なんで一般人を撃ったんですか?」
少女に迫られた男はなんの抵抗もなくペラペラと理由を話し始めた。
「家族連れだったな。肩がぶつかったことに因縁をつけられて、その家族の父親にカツアゲされそうになったから撃った」
少女は口を開けて心底驚く。
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