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この男はそんなことで銃を撃ったのか
「ボス!!そんなことで撃っちゃったんですか!!なに考えてんの!?」
「夫婦もろとも腹に風穴開けてやったぜ」
悪びれる様子もなく男は少女に話す。
そんな男を見て少女は呆然とする。
「……そりゃあ、アナタの様な方に無謀にもカツアゲなど笑止千万ですが、銃殺するほどでも無かったのでは……?」
少女は男に若干失望感を抱きながらも呟く。しかし男の口から返ってきた言葉は意外なモノだった。
「落ち着け優しい部下よ。別に殺してなんかいない」
へ?と少女の口から声が漏れる。
そんな少女を眺めながら男は続ける。
「言ったろ?腹に風穴を開けてやったとな。本気で殺すつもりなら、腹じゃなくて頭を吹っ飛ばしてるさ」
「……ということは?命に別状はないってことですか?」
「あぁ……しかも急所をハズしてある。今頃、誰かが呼んだ救急車の中でギャーギャー夫婦で仲良く元気に騒いでるだろうよ」
男はあくびをしながら面倒くさそうに話を続ける。
「勘違いしないでほしいぞ?俺は奴らを殺したんじゃない。むしろ救ってやったんだよ」
「救った?」
男の言っている意味が理解できなかった少女は首を傾げる。
「そう……救ってやったんだよ。もし仮に俺があのまま父親に金を渡してたらどうなると思う?その後、調子に乗って色んな人間に同じ脅し方で金をかき集めまくるぞ?あの父親は」
「それがどうかするんですか」
「妻と娘が危険に晒されるだろ。カツアゲされた相手が復讐にきてもおかしくないだろ?そうなったら標的は妻か娘だ。いつか本当に殺されちまう。だから俺はあの父親にこう言ったんだよ。戦う時はいつも1人でいるときにしろとな」
「なるほど……悪いことばかりしてると自分の家族に危険が降りかかりますよってことですね」
「家族を護りながら悪を突き通せるような奴なら問題はないがな。しかし俺はあの父親にそこまでの度胸も力もないと見た」
「だからあえて銃で撃って……家族が巻き込まれる恐怖を植え付けたんですね」
「この先、二度とやらないだろうな。カツアゲなんてモンはよ。銃という一番恐い方法で恐怖を与えてやったからな」
「……でもやりすぎですよ……お灸をすえるってレベルじゃないですよ」
「少し熱すぎたって感じだな。とにかくあの夫婦は死んでねぇから安心しろ」
少女は安心したように胸をなで下ろした。
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