それぞれの10月15日②

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「それではこれより幹部昇進を果たした水田稲美を祝福して!!俺はお前にこれを送る!!」 突然の発言に驚いた水田を無視してクルッと後ろを振り向く朝倉。 すると水田の視界に今まで朝倉の体に隠れてて見ることのできなかった光景が飛び込んだ。 「あ……」 「どうだ綺麗だろ?これがお前に見せたかったモンだ」 水田の視界には、夜の暗闇の中で綺麗に輝く能力省が浮かび上がっていた。 基本的に能力省は周りを大きな巨大な壁で隔離しており、夜になると真っ暗で何も見えないのが普通だ。 しかし水田は今、朝倉と一緒に上空300メートルで遠くにある能力省を見ている。 つまり普段なら見ることのできない能力省の綺麗な夜景を見ることができるのだ。 上からドーナッツの真ん中を見ているのを想像すれば分かりやすい。 「もう少し近づけばもっと綺麗なんだけどな?だがそれをやっちまったらあの壁を越えちまって能力省の敷地に入っちまう」 そうなってしまったら、一斉に能力省にある監視システムが作動し朝倉と水田は能力部隊に捕まってしまう。それだけは避けたい。 「綺麗です……とっても」 夜の暗い空間を切り裂くようにピカピカと光る能力省。まるで、夜空に広がる無数の星のようだった。 その能力省で今もなお必死に働いている人間が何人もいると想像すると心が温かくなる。 「いいか水田……俺達はいつか必ずこの能力省を支配する。よくこの光景を頭に刻み込んでおけ」 「このロマンチックな夜景を台無しにする発言ありがとうございました」 2人はこの美しい能力省の姿をしばらくずっと眺めていた。 これは 朝倉蓮と水田稲美の 10月15日の午後9時から午後10時までの出来事である。
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