それぞれの10月15日③

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深夜。 研究機関の中に存在する特別宿泊部屋のベッドの上でその少年は気持ちよく眠っていた。 静かな室内。かすかに少年の寝息が聞こえるがそれ以外の音は一切無かった。 しかしその静寂はドアを叩くノックの音で破られる。 ドンドンと響くノックの音に、たまらず目を覚ます少年。 彼はめんどくさそうにベッドから起き上がる。 「チッ……どこのアホだ?こんな夜中に……」 少年は部屋の入り口のドアまで向かうと、なんの警戒もなしにドアを開ける。 ドアの向こうには白衣を着た若い女が眠たそうな顔をして立っていた。 そんな女を見て呆れた少年は小さくため息をつく。 「なにしにきやがった?」 少年の乱暴な口調の質問に女は答える。 「私だって眠いんだよ。だがいち早く君に伝えたいことがあってね」 「昼間にすませろ。今何時だと思ってんだ?」 「オヤジだ」 「……殺すぞ?」 白衣の女はヘラヘラ笑いながら少年の部屋に入っていく。 少年も女を止めようとはしなかった。 女は近くにあった椅子に座ると少年に話し始める。 「……大変なことになった」 少年はベッドの上に寝転がる。 「なにがどうした。内容を言え。俺は眠いんだよ」 「今日の昼間……君と同じオーバーランクの能力者が研究機関に検査しにきた」 「……なに?」 険しい顔になる少年。 少年は女に問う 「間違いねぇのか?そいつの名前は?」 「黒井勇太……高校二年生の平凡な男の子だ。君と同世代じゃないかな?彼の能力はとにかく化物級だった。研究機関だけじゃなく能力省も大騒ぎだ」 「おかしいな。俺は今日ずっと研究機関にいたがそんな話聞いてないぞ」 「研究員や上位のクラスに位置する能力省の人間しか知らなかったんだろうな。情報が漏れないようにしていたのだろう。もちろん私は博士だから昼間の段階で知っていたが」 女の話を聞いて舌打ちをする少年。 少年はイラついた様子で話す 「なんでテメェがこんな夜中にそれを俺に伝えにきたのか疑問なんだが」 女は少し沈黙した後に続ける。 「黒井勇太の超能力は“一方通行”(アクセラレータ)と言って、この世で観測されるありとあらゆるベクトルを操作できる代物だ。これの意味……分かるよな?」 「……ベクトルを操る?どんな化け物だよ……。通常兵器じゃダメージなんか与えらんねぇ」
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