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とはいえ2人きり。
アパートが見えてきた頃にはあたしと水嶋さんの会話も盛り上がってきていた。
仕事の話。茉希や佐藤さんの話。アパートの近所の話。
あたし達が並んでアパートの階段を上がると、部屋の扉の前に人影が見えた。
ん…誰か…いる?
手前の水嶋さんの部屋の前に、痩せ型で巻き髪のきれいな女性が立っている…
しかも…
泣いてる?
「ヒロ…私やっぱり…」
それまでずっと笑っていた水嶋さんの顔が、一瞬厳しくなる。
「香織…中に入ろう。希ちゃんごめん。またね。」
振り返った水嶋さんは笑顔だったけど、あたしには痛々しく見えた。
そして、何も言えないあたしの前で、静かにドアが閉まった。
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