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私は中学校を卒業すると、進学はせず、家を出た。
母親は理由が分からなかったようだ。
あれから毎晩のように、私はあの獣に蹂躙されていた。にも関わらず、母親は気づいてなかったのだ。
毎日の家事に追われて……言い訳だ。
私は母親の分身。
いなくなれば、家事を全て自分が熟さなければならない。
いなくなれば、自分が困る。
だから、気づいていない『フリ』をしたのだ。
私は友達のところに転がり込み、住み処を転々とした。
最後は街で出会った見知らぬ男のところに転がり込んでいた。
お金のない私は、その見返りに自分の身体を提供した。
上手くすれば、お金も貰える。
避妊だけが問題だった。
私は同級生が年相応の恋愛をしている時に、避妊リングを入れる事を決意した。
その時の先生が、この産婦人科の院長なのだ。
今は院長の娘が跡を継いでいる。
旧知の仲である私は、彼女に好き放題言っているのだ。
――――――
「高崎さん、高崎菜穂子さーん」
名前を呼ばれた少女は、自分の名前を呼んだ看護師が顔を出している扉に向かった。彼女は真っ青な顔をして、ただ足を動かしているだけのようだ。
そう、私は彼女に同情している。
私は彼女から視線を外し、また暫くは顔を見るつもりのなかった先生に、その視線を移した。
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