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彼女は黙って首を横に振る。 「どうする? 私から警察に通報する事も出来るけど」 それには私が答えた。 「通報したからって犯人が捕まる可能性は低いし、この娘が元に戻る訳でもないじゃん。悪戯に周囲に知らせる必要はないと思うけど?」 「それはそうだけど……」 直後なら、体内に残った精液からDNAを調べる事が出来る。それを手掛かりに出来ただろうが、今はもう無理だ。 現実問題は、彼女の胎内に芽生えてしまった望まれない命だ。 今、この瞬間にも育っている命。 私と彼女は書類に必要事項を記入し、手術の予約をすると、病院を後にした。 彼女の顔はまだ沈んでいる。 私がどうしたのか尋ねると、手術が日帰りではないのが問題らしい。 親にどう言うかを悩んでいるのだ。 親に言えず一人で此処に来たのだから、中絶についても言える訳がない。 高校に入ったばかりで、口裏を合わせて貰えるだけの友達もまだいないのだろう。 私は「大丈夫」と笑顔で言うと、彼女を私の自宅に連れ帰った。
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