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それから、私と彼女の、菜穂子との交流が始まった。 何をするでもない。 菜穂子が私の部屋に来て、勉強をする。 私は夜、仕事があるので、そんな菜穂子の為に軽い食事を用意して、出掛ける。 私が帰る頃には菜穂子は既に帰宅しているが、後片付けを済ませて、代わりに私の食事を用意してくれている。 そんな、とても心地好い交流。 次第にそれが当たり前になっていった。 ある日、私が出掛ける支度をしていると、菜穂子が封筒を差し出してきた。 この日は来た時から様子が違っていた。 何かと訝しみながら受け取り中を覗くと、現金が入っている。 「あの時の……手術代。立て替えてくれてたでしょ?」 「このお金は?」 「貯金」 「……返すわ。貴女が出す必要ないでしょ?」 私の含みのある言い方に、菜穂子が頭を傾げるが、私は笑ってごまかした。 「大丈夫だから、戻しときなさい。お母さんにばれるわよ?」 すると、次は私が首を傾げる番だった。 「大丈夫。私、友達と旅行するからって言ってあるから」 「旅行?」 「うん、今日から一週間」 そういえば、ここ最近、菜穂子の来る時間が早まっていた。 私がまだ寝ている時に来て、静かに勉強をしていたのだ。 私は季節を気にしたりしないが、もう夏になっていた。 菜穂子は今日が終業式だったのだ。
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