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「何処に行くの?」
私は答えが分かっていながら、尋ねる。
菜穂子は俯いて何も答えない。
「友達には何て?」
「……彼氏と旅行」
少し拗ねた口調だ。
「彼氏? ふぅん、いたんだ。知らなかった」
あ、膨れた。
私はくすりと笑う。
「荷物は?」
途端に、菜穂子の顔が明るくなった。
そして、そそくさと玄関に消えると、大きな鞄を持って戻ってくる。
私は苦笑いをしつつ、
「私は仕事だから、いつもと変わらないわよ」
「はい!!」
満面の笑みを浮かべる菜穂子を可愛いと思う。
そして漸く、笑顔が戻ってきたのだと思うと、私にも自然と笑顔が浮かんできていた。
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