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高崎菜穂子は、自宅の自分の部屋のベッドに横になっていた。いつもと変わらない夜だ。
違うのは彼女の心。
――このまま死んでしまいたい。
彼女の頭に浮かんだ心の声。
でも、男達に押さえ付けられた場所が痛くても、男達に貫かれた場所から血を流しても、彼女の命まで流れる事はない。
どんなに傷付いても、死ぬ事はないのだ。
そう。
彼女は今夜、見知らぬ男達から暴行を受けた。
でも、見知らぬ人に救われもした。
その女性は彼女に何かを強要する事なく、彼女に手を差し出してくれたのだ。
見知らぬ彼女の為に。
お母さんには何も話していない。今夜の事を知ったら、どんな顔をするのだろう。
怒って犯人を探そうとしてくれるだろうか?
でもそれは、自分の娘が性犯罪の被害者だと世間に知らしめる行為だ。
そんな思いを巡らせ、結局、彼女は母親に期待を持つ事は出来なかった。
彼女は眠る事が出来ず、ただ、闇虫が飛び交う天井を見つめているのだった。
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