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私は再度、彼女に声をかけた。
「私も此処に用事があるの。……一緒に行く?」
理由は聞かない。
でも彼女には此処に来る必要性があるのだ。産婦人科に。
親には知られないように。
それは私が予測した最悪の出来事ではないだろうか。
彼女が私の顔を見る。
私は眉を上げて、答えを促した。
すると堪えていた感情が溢れてきたのか、彼女はボロボロと涙を流し始める。
きっと相談出来る人がいなくて、一人で不安に押し潰されかけていたのだろう。
私は少女を抱き締めると、落ち着くまで待った。すると、
「ありがとうございます。……二回目ですね」
少し落ち着いたのか、そう言って、涙で汚れた顔を私に向ける。
「覚えてたの?」
「今、思い出しました。あの時はありがとうございました。そして、今日も」
「気にしなくて良いわ。一緒に行ってあげるから安心して」
私はまだ不安そうな彼女を病院へと促す。しっかりとその小さな肩を抱いて。
歩きながら、私は昔を思い出していた。
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