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弥生は山奥の小さな村に住んでいた。決して裕福でもなく、貧しいという方が正しかった暮らし。
それでも弥生は満足していた。
両親と毎日畑仕事をして家事をして、色々なことを教えて貰って。
村に同じくらいの歳の子供は一人しかいなかったがその男の子とも暇があればいつも走り回っていた。
ある日、その友達の男の子、幹太(かんた)と木に登って遊んでいた時のことだった。
村の入り口から灰色の小さな鳥がくちばしに折り畳んだ紙をくわえながら入ってきたのだった。
「ん?あれ何だろー……」
弥生が太い枝に足をかけて、入ってきた鳥を目で追いながら呟いた。
「何だよ弥生」
「今、灰色の鳥が……」
あれ?家の中に入った。……私の家じゃん!
「そんなもんいねーじゃねーか」
幹太が呟くと同時に弥生は自分の身長の倍ほどある高さの木から飛び降り、自分の家に向かって走り出す。
「どこに行くんだよ弥生!」
「ごめん帰る!またねっ」
相手の返答も聞かずに弥生は一直線に家に向かって走り出した。
あんな灰色の鳥、見たこともない。
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