第一章

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☆…… 「ふわぁ~おっきい桜の木!」 「……時間ないぞ?」 「あ、ごめん」  なんとか時間ギリギリでついた。  他の生徒はすでに集会ホールに集まっているらしく、人影は見当たらない。 「すぐそこの、あれが、集会ホールだから」  校門から右斜め先に見える建物を指差しながら言う。 「けっこー近いんだぁ。これなら遅刻は誤魔化せそうだね」  悠里はそれを頷いて肯定し、足を止めた。 「じゃあ、俺はこれで」 「え? 君は出ないの?」  驚いた表情で少女は問う。  まぁ案内した本人が出ないって言うんだから当然だ。 「集会とか、人が集まる場所は、苦手、なんだよ」  デフォルトで睨まれ続けるやつが、いきなり密閉空間で極近距離に人を置かれてみろ。  どんだけキツイかは経験しないと分からないだろう。  肩が触れようものなら全力でぶっ叩かれそうな勢いだからな。  というかちょっとの会話でこんなに声震わせてる時点で、人付き合いが苦手そうくらいには察してほしい。 「ふ~ん……」 「てか、俺のことは、いいから、早く行かないと、遅刻が、バレるぞ?」 「あぁそうだった! じゃあもう行くから!」
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