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走り去る少女を見送り、ふぅと一息つくと、俺は思い出したようにあっと声をあげた。
「そういえば、あの子の名前も知らないな」
悠里自身なんとも間抜けなミスだと思うが、今更どう思ってもしょうがない。
……クラス同じだったら、会えるかな?
そう思いながら、悠里は校舎に背を向けた。
ちなみに、一人になった途端普通に声が出るようになったのにはツッコまないでくれ。こっちにも事情があるんだ。
☆……
しばらく経って、ガヤガヤと声が聞こえてきた。
悠里は桜の木に登り、太めの枝の上で幹にもたれ掛かっていた。
結局あの後、クラスの自己紹介くらい出るかと決め始業式が終わるまで待っていたのだ。
見下ろす形で生徒たちが教室棟の方に歩いていくのを視認する。
あの少女の姿を探してみるが、人が多いのと多少距離があるためさすがに見つけられなかった。
人混みが去った後、木から降り自分の教室を目指す。
二年三組が悠里のクラスだ。さっき確認した。
階段を上り、廊下を進むと二年三組の文字が確認できた。
そしてたどり着いた教室の扉を開ける。
「「「…………」」」
悠里が扉を開けた途端、先ほどまでの喧騒は静まりその場にいた全員が一斉に悠里を睨み付ける。
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