第一章

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 だがそれは一瞬。次の瞬間には彼は"いない存在"として扱われ、クラス内には再び喧騒が戻る。  ……毎年のことなのでもう慣れた。  教室を見渡し、空いている席を確認する。 「はぁ……」  空いていたのは、真ん中最前列の二席のみ。  時間を問わず視線が集まる場所――要するに悠里には一番都合が悪い席だ。  そりゃため息もつきたくなるだろう。  仕方なく、空いていた片方の席につく。 「おら、席につけ! もう始めるぞ!」  それとほぼ同時に、先生がやって来る。通称マルガリータこと丸田先生だ。  スキンヘッドで生徒指導担当。何かと俺に因縁をつけてくる嫌いな教師ナンバーワンだ。  いかつい顔で生徒を威嚇し席につかせたマルガリータは、ゴホンと息を整えてから教卓に手をついた。 「まぁまず皆の自己紹介から始めたいと思うが、その前に新しい仲間の紹介だ」  そう言い、ドアの方を向くマルガリータ。  それを合図に入ってきたのは、女子生徒だ。  闇色の長い髪と大きな瞳。  それらと対照的に白い肌。  少し小柄でスレンダーな体つき。  そう。彼女は――
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