36人が本棚に入れています
本棚に追加
だがそれは一瞬。次の瞬間には彼は"いない存在"として扱われ、クラス内には再び喧騒が戻る。
……毎年のことなのでもう慣れた。
教室を見渡し、空いている席を確認する。
「はぁ……」
空いていたのは、真ん中最前列の二席のみ。
時間を問わず視線が集まる場所――要するに悠里には一番都合が悪い席だ。
そりゃため息もつきたくなるだろう。
仕方なく、空いていた片方の席につく。
「おら、席につけ! もう始めるぞ!」
それとほぼ同時に、先生がやって来る。通称マルガリータこと丸田先生だ。
スキンヘッドで生徒指導担当。何かと俺に因縁をつけてくる嫌いな教師ナンバーワンだ。
いかつい顔で生徒を威嚇し席につかせたマルガリータは、ゴホンと息を整えてから教卓に手をついた。
「まぁまず皆の自己紹介から始めたいと思うが、その前に新しい仲間の紹介だ」
そう言い、ドアの方を向くマルガリータ。
それを合図に入ってきたのは、女子生徒だ。
闇色の長い髪と大きな瞳。
それらと対照的に白い肌。
少し小柄でスレンダーな体つき。
そう。彼女は――
最初のコメントを投稿しよう!