第一章

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「はじめまして、遠藤命(えんどう みこと)と言います! 先月に越してきて、今年度から皆さんと同じこの和桜高校に通うことになりました! よろしくお願いします!」  道に迷っていた、あの少女だった。  突然の美少女の登場に男子諸君は歓声をあげた。  悠里はというと、無言無表情のまま手だけを机の下で小さくガッツポーズしていた。  まさか本当に同じクラスになるとは。  彼女はしばらく教室を見回した後、悠里に気づきあっと声をあげる。 「君も同じクラスだったんだ~! これからよろしくね!」  彼女は、当たり前のように俺に話しかけてきた。  朝のは夢じゃなかった。  それがたまらなく嬉しくて、今度こそちゃんと返事をしようと思った。  が、  クラス内が瞬間、静寂に満ちた。  悠里はそれを感じ取り、気持ちが声になる前に留める。  彼女は、突如変わったクラスの空気に戸惑いを覚えているようだ。  あぁ、そうか、と。  悠里は、思い知った。  〈キラワレモノ〉の俺には。  世間が、社会が、世界が。  友を持つことすら、許してくれないのだと。  もし、今悠里が普通に挨拶して話そうものなら、彼女はきっと悠里と同じ扱いを受けることになるだろう。  〈キラワレモノ〉の仲間として。  そんなこと、悠里にやれるはずがない。  彼は〈キラワレモノ〉として生きるには優しすぎた。  だから。 「……何のことだ?」  知らないふりをした。 「えっ……?」 「まぁとりあえず遠藤は座れ。これからお前らの自己紹介だ」  彼女が驚きを顔に出すと同時にマルガリータが話を進め、悠里の隣に座らされた彼女はただただ混乱していた。  そして、クラスの自己紹介が始まった。  当然の如く、悠里の出番はなかった。
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