第一章

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  「夢、か……」  嫌なもん思い出したな、とか思いながら彼――三河悠里(みかわ ゆうり)はダラダラと起き上がる。  軽く伸びをすると、体の節々がパキパキと音をたてた。  ちょっと痛い。  イラっとする。これが快感の人の気がしれない。  朝っぱらからそんなくだらない事に思考を巡らせつつ、悠里は用意しておいた朝飯用の食パンをくわえた。  そのまま手早く制服に着替えると、いつもどおり眠気覚ましのため外に出る。  空は快晴。雲一つ見えない陽気な天候だ。  そんな中、悠里は食パンをくわえたまま空にうぜぇの一言を浴びせる。  まったくもってお天道様は理不尽なものだ。  こういう日に限ってムカつくほど綺麗な青空を見せやがって。  くわえていた食パンを手を使わずに器用に口に収め、しばらくモグモグと噛んだあと飲み込む。  やっぱ朝は食パンに限る。トーストすればなお良しだが、生憎そんな設備悠里の家にはない。  そんなことより、さらに悠里を失意させるのは今日の予定にあるだろう。 「始業式、か。最悪だ……」  今日は、高校生活二年目が始まる日だ。
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