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去年の散々な記憶が無意識に頭の中を駆け巡り、気分が悪くなる。
決して自分が悪いわけではないのだが、それからの一年間は苦行以外の何物でもなかった。
それからは、悠里にとって学校は絶望しかない地獄となんら変わらない。
そんな悲観に満ち溢れた思念がさらに気分を悪くさせる。
顔でも洗ってスッキリしよう、と家のすぐそば――というか真横にある川に近づき、跪いた。
夕夏(ゆうか)川と名付けられたその川は、小さいながらもとても綺麗な水が流れていることで有名らしい。
その水面に浮かぶ、自分の顔。
ニキビなどは無く割りと綺麗な肌に、特にセットなどはされていない中途半端な長さの黒髪。
少しつり上がり気味な三角眼は二重だ。
その表情は無愛想だが、まぁそんなに酷い顔立ちはしていない。
改めて自分を見つめ直し、はぁとため息をついた。
「なんでこんなに嫌われるんだろうな」
顔をばしゃばしゃと洗うが、気分はさらに悪くなったようにも思える。
苦い表情のまま、彼は橋の下にある四角錐型の我が家へと戻っていった。
☆……
「ねえねえ、何組だった?」
「あたし三組! そっちは?」
「あたしも!」
「「きゃーー!!」」
昇降口前。
クラス表確認のため人で溢れかえる空間に、悠里はいた。
まぁそうは言っても戦場(クラス表前)からは少し離れた位置だが。
それでも人は多いわけで。
「…………(チッ)」
……さっきから、いろんな人から決して好意的とは言えない視線を浴びせ続けられてるわけで。
はっきり言って居心地が悪かった。
始業式サボろうかな? なんて考えながら悠里は校門のほうに足を運ぶ。
その先では、異様な大きさを誇る桜の木が花を散らしていた。
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