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ふと、視線の端に入ったものがあった。
それは、困っている様子の少女。
遠くからなのでよく分からないが、見た感じ同年代だろう。
綺麗に整えられた闇色の髪を風になびかせながら、辺りをキョロキョロとしている。
どうやら迷ってしまっているようだ。
だが悠里は我関せずの念で善意を押し殺し、何事もなかったように歩きだした。
理由は簡単。
近くにいれば避けられ
話しかければ無視され
ついには視界に入るだけで舌打ちされる。
そんな対応しか、悠里は受けたことがなかった。
店の店員だろうが
学校の教師だろうが
その辺歩くサラリーマンだろうが
そんなのは関係ない。
なぜか悠里は、"理由もなく人に嫌われた"。
だから、人助けしようが罵倒される。そんなことは経験済みだし、もうごめんだった。
そして少女の横を通り過ぎる。
「あの、すみません」
お、どうやら少女は他の人に助けを求めることができたようだ。
「あの~、そこの人~」
見過ごした罪悪感が少し薄れる気がし「あの!」……俺のことか? まさかな。
一応、振り向いてみる。
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