2.闇を愛する人

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「ご当主。  いかがなさいますか?」 「暁華。  桜の精霊の力は借りれるか?」 「えぇ」 桜瑛と別れ大学に一度顔を出し、 午後一番に本家へと戻り一族の仕事をこなして食事会。 決められたタイムスケジュールを 着々と確実にこなし終えて今は(さくら)と言う一族の役割を持つ暁華と共に行動している。 現在、嘉納の爺さんの依頼と市松の結界補強の真っ只中。 嘉納の爺さんの所有するビルに入った時点で、 締め付けるような重苦しい黒い気が空間を包み込む。 思わず印を軽く組んで周囲を切り取るように四方の結界をはる。 そして……今、俺の隣にいる俺の一族・徳力の第二の実力者。 (さくら)を務める徳力暁華と共に対象物の打破を狙う。 「ならば、さくらは精霊の力を借りて浄化を。  俺は貴咲(きしょう)を顕現させる」 そう紡ぐと貴咲顕現の為の召喚術を紡ぎ始める。 貴咲。 今日の名を……貴咲を呼べるは一族でただ一人。 当主を務める俺のみ。 貴咲は俺の一族、徳力のご神体。 守護龍。  龍族としての正式名は雷龍翁瑛(らいりゅう おうえい)。 そして俺の亡き父が貴咲に名づけたもう一つの名前が宵玻(しょうは)と言う。 ご神体の守護龍は歴代の当主が、そのものを親しみを込めて 呼ぶために顕現時の呼び名を名づける。 それが俺と守護龍を結ぶ絆となり契りとなる。 俺が当主をしている今、 俺自身が呼ぶ際には貴咲と紡いで神を俺の言霊で縛る。 そしてもう一つ俺の親父が名づけた名前、 (宵玻)を使い貴咲の力を借り受けることが出来る唯一の存在。 それが早城飛翔(はやしろ ひしょう)だった。 だが俺が高校一年の時、親父の名付けた名前を解放して以来、 今もその名が有効なのかはわからない。 飛翔は親父の弟。 弟っと言っても年はかなり離れていて親父と兄弟って言うよりは、 年の離れた俺の兄貴って言ってもギリギリ通じるくらいか。 そいつが今の俺と生活する家族みたいな存在。 さて。 軽く身の上話してる間に召喚が出来そうだ。
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